第77章 聖なる夜は騒がしく
――――
――
雪に足をとられながら歩いて、やっと大きなかまくらに辿り着いた。
かまくらから少し離れたところで焚火をしていた信玄様がやっと来たかと腰をあげた。
「わぁ!!大きいかまくら!作るの、大変だったんじゃないですか?」
謙信「そうでもなかった。佐助が面白がって強度を強くすると細工を施したので、当初の予定より手間取ったがな」
「そういえば数日前に佐助君と蘭丸君がお水を頻繁に汲んでいた気が…」
ここ数日縫い物に夢中だったので気にも留めなかったけど、考えてみれば皆が慌ただしく動いていた気がする。
謙信様は自分の背丈よりも高いかまくらを見上げている。
謙信「お前達の時代に行っていた時、どこぞの冬の風物詩としてかまくらの中で人々が餅や甘酒を飲んでいるニュースを見ただろう?」
「そうでしたね…」
確か節分とかそんな時期だった気がする。
毎年行ってみたいと思うけど、遠い上に雪道の運転は怖いから行ったことがないと話した記憶がある。
謙信「俺達の時代は神聖なかまくらの中でどうこうする習慣はなかったが、ニュースで見た風景ならば戦国の世に戻ってからでも俺の手で作ってやれると思った。
一人で作るつもりだったが、気づけば皆の手を借りていたが……気に入ってくれたか?」
「はいっ、とっても!!!こんなに気持ちのこもったプレゼントは初めてです。ありがとうございます」
謙信「良かった。その顔を見られただけで、準備した甲斐があるというものだ」
謙信様の口元がほころび、私もつられて微笑み返した。
信玄「桃色の空気を出しているところ悪いが飲み物を持ってきたぞー。
今夜は一段と冷えているな。温かい飲み物を用意しておいて良かった。結鈴と龍輝は悪いがお茶だ…大人はこっちだ」
「信玄様が用意を?申し訳ありません、ありがたくいただきます」
湯呑から伝わる熱が冷えた手を温めてくれる。
謙信「現代でもこちらでも毎日毎日茶を煎れてやっているのだ。かしこまらず受け取れ」
信玄「俺のセリフをとるなよ、謙信」
苦笑いを浮かべ、信玄様が子供達にお茶を渡すと『中で飲む!!』と入っていった。
手渡された湯呑から立ちのぼる湯気はとても良い香りがした。