第77章 聖なる夜は騒がしく
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重い玄関の戸を開けて外に出ると、外の空気はキンと冷えていて、ぶるっと身体が震えた。
「さ、さむっ!!!」
(謙信様はどこに居るんだろう)
月は細く、辺りは暗い。
降り積もった雪がボンヤリと白く浮かび上がって見えた。
結鈴「あ、ママだ!!そこで待っててね!!」
龍輝「よーい、スタート~」
「…え?」
家の影から現れた二人は信玄様と佐助君に付き添われて、駆けて行く。
「ちょっと…?」
謙信「舞、楽しみはとっておけ。
龍輝達から声がかかるまでこちらを向いていろ」
いつの間にか現れた謙信様は火をともした提灯を手に、近寄ってきた。
家の壁の方に向きを変えられた。
「はい。それにしても寒いですね…って、謙信様、その提灯どうしたんですか?」
提灯にはサンタクロースらしき顔が描かれている。
筆でかかれたサンタクロースのラインは太かったり細かったり、ガタガタだったけど味のある顔になっている。
花の汁か何かで色付けされているので、淡い色合いではあったけど、それらしくかかれている。
花の汁が紙に滲んで広がった跡をみると胸がきゅっと温かくなった。
謙信「これか?龍輝達が作ったものだ。
骨組みに紙を貼りつけたのは俺だがな」
「え、謙信様、そんな特技をお持ちなんですか?」
謙信「職人には叶わぬが、この程度ならできる」
「へぇ……」
(この程度って、全然ふつーに職人さんと変わらない出来だと思うけど…)
大きく息を吸うと喉の奥が凍りそうになるくらい寒い中、手を擦り合わせて待っていると後ろから抱きしめられた。