第77章 聖なる夜は騒がしく
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「龍輝、パパと信玄様を呼んできてくれる?
結鈴、信長様と光秀さんをお願いね」
龍輝・結鈴「はーーい」
頭にクリスマスカラーのとんがり帽子をかぶった二人が走っていく。
紙が手に入らなかったので、赤と緑の布をベースにパッチワークで帽子を作ってみた。
帽子の先につけた黄色の星が揺れて、とても可愛らしい。
それを見送り、料理の最後の仕上げをしていると、蘭丸君がヒョイと手元を覗き込んできた。
蘭丸「舞様、その模様は何か意味があるの?」
「これは色んな意味があるけど、今は『大好き』っていう意味。ハートって言うんだよ」
蘭丸君がピンときたように瞳を輝かせた。
蘭丸「わかった。じゃあ今仕上げているのが謙信殿の料理なんだね。
だって他のお皿はみんな『はーと』じゃないもの」
「やっぱりわかっちゃう?」
謙信様以外はスマイルマークや、星型だ。
蘭丸「もちろん!舞様は本当に謙信殿が大好きなんだね」
「子供達にもよく言われる…」
照れながら手元のオムライスに人参のグラッセを添え、乾燥パセリを散らす。
(グラッセといってもバター無しだから砂糖煮になっちゃったけど艶は出たかな)
サラダとコーンスープを合わせたかったけど、どちらも冬に用意できる食材じゃなかったのでほうれん草の炒め物と卵スープにした。
隠し味に胡椒を使ったから、信長様達の反応が楽しみだ。
蘭丸「それにしてもこの唐揚げって美味しんだね。もう一個食べてもいい?」
さっき蘭丸君に味見してもらったら気に入ってくれたようだ。
さっきから話しながらチラチラと唐揚げのお皿を見ている。
「仕方ないなぁ、あと一個だけね」
蘭丸「やった!毎日くりすますだといいのに」
「ありがたみが減っちゃうよ!キリスト教の神様の誕生日だから一年に一回だけ。
西洋だと七面鳥っていう鳥を丸焼きにして家族で分けて食べたりするんだよ。
七面鳥は私も馴染みがなくて食べたことがないし、ここで丸焼きはできないから唐揚げにしたんだ。
蘭丸君が気に入ってくれて良かった」
唐揚げを作る時の揚げ油は蘭丸君が集めてくれたものだ。
鶏を絞めるのもお願いしちゃったし、この唐揚げは蘭丸君あってのものだ。