第76章 姫の好奇心(R-18)
「え?!!?だ、ダメダメダメ!です。絶対、だめ」
舞は顔の前で両手を交差して『×』を作り、
謙信「おぞましい……」
謙信は端正な顔を思いっきり歪め、刀の柄に手をやった。
謙信「信玄。この俺に不快な思いをさせた罪を償ってもらおう」
信玄「おっと!姫が居るのに危ないだろう?」
信玄が鞘から刀身を半分だけ引き抜いて刀を受ける。
ギィン!という金属音が辺りに響き、風圧で舞の前髪がふわっと浮いた。
「っ」
舞は間近に見た銀色の輝きに目を見開いた。
謙信「姫鶴が舞に触れることはない。
信玄、安心して斬られろ」
信玄「どこの世に『安心して』斬られる奴がいるんだ?
人の善意を刀で返すような旦那でいいのか、舞。いつでも俺のところに来ていいからな」
「あ…」
信玄が舞の赤い頬に羽のような口づけをした。
「し、信玄様っ!!」
信玄「充電だ。最近、君が足りなかった」
謙信「人の妻で充電するのはやめてもらおうか。死にたいのならそう言えば良いものをっ!!」
びゅっ!と風切り音がして謙信の刀が襲い掛かり、信玄は長太刀を全て引き抜いて応戦した。
佐助「舞さん、避難だ!」
「わっ!?」
突如現れた佐助に抱えられ、舞は一瞬の浮遊感の後に屋根の上に居た。
高さに驚いて固まっていると、
龍輝「わあ、ママも来たの?」
結鈴「ここから見てるとね、面白いんだよ~」
足をぶらぶらと揺らしながら龍輝と結鈴が楽しそうに下を見ている。
「居ないと思ったらこんなところに……」
蘭丸「謙信殿が鍛錬している時はここが定位置だよね」
龍輝・結鈴「「うん!」」
下を見ると華麗な動きで謙信様と信玄様が戦っている。
最早鍛錬じゃなく本気だ。
(でもなんだか二人共いきいきしてるな…)
舞は微笑ましく二人を見守った。