第76章 姫の好奇心(R-18)
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落ち着かないお風呂タイムを終え、部屋に戻って来る途中……、行灯が灯った部屋、灯っていない部屋関係なく『あの声』が聞こえてきた。
「……」
廊下の灯りは無くて、月明りを頼りにゆっくり歩くしかない。
これが明るい廊下なら走って退散するのに。
(な、なんかお昼より皆、激しい…)
一度目のお風呂に向かう時や、お手洗いに立った時は少し声が洩れていた程度だったけど、今は恥じらいも何もない喘ぎ声や甘い睦言がはっきりと聞こえる。
「……」
前を歩く謙信様の袖を掴むと、歩みを緩めて手を握ってくれた。
謙信「すまなかった、最初から手を引いてやるべきだったな」
薄く笑った表情はいつも通りで変わらない。
他人の声なんて気にもしていないようだ。
(謙信様だもんね。このくらいじゃ動じないか)
温かい手に引かれて、部屋に向かった。
お風呂で温まってポカポカしている身体の奥で、小さな熱がくすぶっていることに、その時私は全く気付いていなかった。