第76章 姫の好奇心(R-18)
「はい……。明日までに、治るでしょうか」
力の入らない手を持ち上げ、手のひらを見る。
少し震えている。
謙信「心配するな。口にしたのは少量でほとんどを吐き出した。ならば静かにしていれば治るだろう」
「媚薬はあんなに心臓が壊れたみたいに早くなるものなんですね。
想像していたものとはちょっと違いました」
もっと甘くドキドキして、とろけるような感覚を想像していたのに。
謙信「薬が舞に合わなかったのだ。
媚薬の症状ではなく、拒絶反応だ」
「拒絶反応……」
謙信「触れると快楽を得ていたようだが、それ以上に動悸、呼吸困難、発汗が酷かった。
少量だから助かったが、小鉢の料理を全部食べていたら危なかった。気をつけろ……」
「はい。すみませんでした」
謙信様は空になったお膳を廊下に出して戻って来ると、胡坐をかいた上に私を抱き上げた。
謙信「顔をよく見せろ」
部屋の広さに対して行灯が小さいので部屋は暗い。
顔を寄せられ、ドキリとした。
謙信「いつもの愛らしい反応だな」
満足そうに笑う謙信様に何も言えない。
さっきまで『いつもの愛らしい反応』ができなかったと自覚しているから。
謙信「長湯はさせられないが、身体を洗ってくるか?
滝のように汗を流していただろう。宿の者に頼み、新しい襦袢を用意してもらった。
さっきの風呂場は明日の朝まで俺達の貸し切り風呂にしてもらった」
「行きたいです!」
朝まで貸し切りなんて随分サービスがいいなと疑問を持ちつつ、お風呂&着替え付きと聞いて、気持ちが浮いた。
(あ、でも…)
謙信「言っておくが俺に外で待っているつもりはないからな。
本調子ではない舞が倒れないよう、傍に居る」
ひとりで入りますって言おうとしたのに、先を読まれてしまった。