第76章 姫の好奇心(R-18)
謙信「つまり舞は、俺が好きでたまらないから『呆れられて、嫌われたらどうしよう』と泣いていたのだろう、違うのか?」
嬉しそうに顔を覗き込んでくる美しい人が、途端に憎たらしくなる。
「そ、そんなこと…」
ないと言いたかったけど、図星だ。
言い訳もできずにコロンと体の向きを変え、背を向けた。
(悪いのは私、絶対私…。ここで怒っちゃ駄目)
謙信「愛しいからこそ本気で怒るというものだ。
舞のことを俺は一生離すつもりはない。何度も言ったのに、わかっていないのか?」
「でも今日は本当に馬鹿なことをしたので、100年の恋も冷めちゃうだろうなって……」
背中にフワリと身体が重なった。
後ろから抱きしめられた。
謙信「100年でも500年でも千年の恋でも、舞に対する想いが冷めることはない。
お前が間違ったことをするなら諫め、愚かな行為で窮地に立ったとしても助けるだろう。
きっとお前もそうしてくれるだろうと、俺は思っているぞ?」
「謙信様…」
謙信「この先途中で惑っても、間違っても、舞と作り上げる人生が楽しみだと思っている。
だから身体は大事にしろ。さっきは本当に生きた心地がしなかった」
「はい。今後、気をつけます。
……ありがとうございます、謙信様」
顔だけ振り返って、頬に口づけを贈った。
謙信「泣いている顔も嗜虐心を刺激されて良いものだが、やはり笑っている顔が一番だな」
「嗜虐心!?っ、ん」
一瞬意地悪と優しさが合わさった笑みが見えて、強引な口づけをされた。
「ん、ぁ……」
口づけしていると怠い身体の向きを変えられ、向かい合わせになった。
謙信「為されるがままだな……怠いか?」
背中に腕が回り抱きしめられると気持ち良い体温にほっとした。
「はい…」
お部屋とお風呂でいっぱい愛された後の薬騒動だ。
クタクタと言ってもいい。
「このまま少しだけ…寝てもいいですか」
謙信「かまわない。今度こそユックリ眠れ」
「ありがとうござい…ま…………」
お礼の言葉は途中で切れたことに気付かず、私はそのまま眠りについた。