第76章 姫の好奇心(R-18)
だって許してくれないって…
嫌われたらどうしようって…
口から出そうになる言葉はどれも口にする資格はない。
泣いて、それを口にしたら謙信様はきっと…許すしかなくなる。
それが卑怯な気がして許せない。
沈黙が続いても、私からは何も言えなかった。
何を言っても言い訳だし、何をいっても新たに涙が出てきそうだから。
謙信「……泣かせるつもりはなかった」
身をかがめ、涙の跡を拭ってくれる手つきは優しかった。
「ごめんなさい……どうしたら、許してくれますか?」
謝っている傍で涙がこぼれてしまい、情けなくなった。
謙信「……灸をすえられたようだな。ならばもう何もする必要はない。
二度と軽はずみな真似はするな」
「は、い」
きゅ、と目を瞑るとまた大粒の涙がこぼれた。
謙信「わかったなら泣くな。もう怒っていない」
「本当?泣いているから許してくれたんじゃ…」
そう言っている間にもひくっとしゃくりあげてしまった。
謙信「…中(あた)らずといえども遠からずだな。
俺に呆れられたと傷ついて泣いたのだろう?
裏を返せば俺が好きでたまらないということだ」
(えっと…)
どういう解釈でそうなったんだろう。