第76章 姫の好奇心(R-18)
謙信「舞が苦しむのを見て、心臓が止まりそうだった。
また……想いを交わし合い、未来を夢見て、失うのかと絶望した」
顔を歪めて呟く様は、過去の経験を呼び起こされ恐れているようだった。
そらされた眼差しは畳を見ていて、虚ろだ。
(過去の再現になるんじゃないかって、本気で心配してくれたんだ)
「謙信様、ごめんなさい。
もう、もう、絶対しませんから」
謙信「許さない」
厳しい声でビシっと言われ、身がすくむ。
チラッと伺うと、畳を見ていた二色の眼差しがこっちを向いていた。
「…………」
謙信「………」
目が合っても厳しい眼差しは和らがない。
どうしたら許してくれるだろう?
ずっとずっと甘く、優しい謙信様だったから、こんなに本気で怒った謙信様にどうしたらいいかわからなくなった。
どうしよう、どうしよう……
心配させて、呆れられて……嫌われちゃったらどうしよう。
自業自得だから泣く資格はないのに、俯いた拍子にウルっとしてしまった。
泣いたら許してくれるなんて甘い。
(どうしたら、許してくれる?)
まだ少しふわふわする頭で考えるけど、謙信様のため息で思考は遮られた。
謙信「はぁ、とりあえず寝ろ」
気のせいか素っ気ない態度。
掛けられた布団の下で手をギュッと握った。
謙信様に呆れられた。
さっきとは違う意味で苦しい。