第76章 姫の好奇心(R-18)
謙信「ならば、弱い酒を頼んでこよう。
舞と共に酒を飲むのは、今日で一旦終わりにする。
最後ではないが、最後の盃を交わそう」
「ありがとうございます。
もう少しだけ飲みたい気分だったんです」
謙信「弱い酒と言っても1杯でやめておけ?」
「はい、わかりました」
謙信様が部屋を出たタイミングで厠に立った。
「ほ、ほんとだ。酔ってる。足に力が入らない」
板の目を頼りに、なんとか真っ直ぐ歩こうとするけどふらつく足は言うことをきいてくれなかった。
足がこんにゃくみたいにクニャクニャだ。
転んでどこかを打ったら謙信様を心配させてしまうからと、壁に手をつける所はついて進んだ。
用を済ませて部屋に戻ると謙信様はまだ帰ってきていなかった。
「とにかく酔っていることは自覚できたかな。
ほんと、あと1杯だけでやめよう」
動いたら少し視界がグラグラする。
お酒が回ってしまったのかもしれない。
「ちょっとお茶以外に何か口にしたいな」
食事は完食しまったし、残っているのはあの媚薬入りの小鉢しかない。
「どんな味がするんだろう?」
媚薬なんて本の中でしか知らない。
「……ほんとにエッチな気分になるのかな」
小鉢の料理は瓜と鶏肉を炊いたものだ。
瓜の端っこが駆けているのは謙信様が毒見したところだろう。
「このくらいの欠片なら、大丈夫だよね」
箸を取り、瓜を小さい、本当に小さい欠片にして口に入れた。
何か変わるかとワクワクしながら待ってみたけど、特に変化はなかった。
普通に瓜の味しかしなかった。
「残念…。本当に薬なんか入ってるのかな」
箸を置いて布団に寝転んだ。