第76章 姫の好奇心(R-18)
「ふふっ、謙信様にそんな目で見られるのは久しぶりです。
安土の姫だと知った時、今みたいに怖い顔をして見られました。懐かしいです」
謙信「疑われ、睨みつけられた記憶を懐かしいと笑うな」
今度は心配顔だ。
「謙信様との思い出は全部大切なので」
謙信「正直に語り過ぎだ…」
目元をほんのりと染めた謙信様に腰をひき寄せられた。
くっついた体温は私の方が高い。
(やっぱり相当酔っちゃってるのかな)
フワフワした思考で謙信様に寄りかかった。
お酌をするといったのに何もしないで寄りかかっている私に、謙信様は何も言わずに手酌で飲んでいる。
謙信様の手が動く度に、上品な仕草に見惚れる。
「かっこいいなぁ、謙信様。大好き、はぁ……」
本音がため息交じりに出てくる。
『素敵……』
『睫毛の一本一本まで綺麗…』
『肌も綺麗だし』
『唇が濡れてセクシー、フフ』
とめどなく一人で惚気ていると……
いつも冷ややかな表情をしている謙信様も流石に恥ずかしくなったらしく、顔を赤らめて片手で額をおさえた。
謙信「わかったから、しばらく黙っていろ。
お前がそんなに酔ったのは初めてだな。絡み酒とは可愛らしいものだ」
「ふふ、可愛らしいって言ってくれた。嬉しいです」
心で思ったことがそのまま口にでる。
謙信「見たことのない面をまだ持っていたか…。愛らしいな」
顎を指でくすぐられてクスクス笑いが部屋に響いた。
謙信「だが子を孕んだらお前の酔った姿はしばらく見られぬな。
せっかく見つけた愛らしい顔もしばらくお預けか…」
「そうですね…。思えば、いつ妊娠しても良いように禁酒しなければいけませんよね…。
今日はもう飲んでしまったので、明日から禁酒しますね」
晩酌の相手ができなくなるのは残念だけど、いつできても構わないと思っているなら我慢しなきゃいけないこともある。