第76章 姫の好奇心(R-18)
「まだ酔っていないですよ。大丈夫です」
謙信「酔っ払いほど、その言葉を使うと言っていなかったか?」
「信玄様達とウイスキーを飲んだ時のことですか?
でも本当にまだ酔ってないです。だって何をしていても素敵だなっていうのは、普段から考えていることですから」
胸を張って言うと、謙信様があからさまにため息をはいた。
謙信「その気持ちはありがたく受け取っておく。
だが普段は胸に秘めて思っていることを、何故、今は口にしている?」
「え……と、あ、そっか、やっぱり酔ってるのかもしれないですね、へへ」
謙信「そのぼんやりした頭を、茶を飲んで治せ」
盃を没収されそうになった。
さっき注いでもらったからなみなみと入っている。
「そのお酒で最後にしますから。
いっぱい入っているのに勿体ない…あ!」
目の前で謙信様が一気にお酒を飲み干した。
謙信「駄目だ。俺にとってはそうでもないが、舞には強すぎる。
顔だけではなく耳や首も赤くなっているぞ」
「そ、そんなにっ?!」
鏡のない部屋なので確かめる術はなく、両手を見る。
「指先までポカポカしますし、心なしか手の甲の血管がいつもより浮き上がっているような…」
謙信「『ような』ではない」
とにかくお茶を飲めと言われて、飲んだ。
「お腹もいっぱいですし、もうお茶も入りません。
横になるほどではないので、謙信様のお酌をしますね」
謙信「無理をしていないか」
「はい♪」
『疑わしい』とこちらを見る目は不信感でいっぱいだ。