第75章 異常(R-18)
謙信「それも全く聞かない話ではない。
血の繋がった者同士の間に出来た子は、身体や心が弱い者が多い。避けられる行為ではあるが…」
(やっぱり、ない話じゃないんだ…)
現代の感覚で言えば禁忌なのに。
ショックを受けていると、謙信様は表情を曇らせ視線を落とした。
謙信「時に上杉家も血が薄れるのを恐れ、血が近いもの同士で婚姻を結ぶこともあったと聞く」
「え……?」
上杉家、というなら目の前にいる謙信様だって…。
謙信「俺の父と母は当てはまらない。何代か遡ると、血を濃くする行いがされたと記録にあった。
俺のこの容姿は遺伝子の異常……なのだろう?
500年後の世で、オッドアイについて記載された本を読んだ」
一瞬だけど、悲しげな光が色違いの瞳を駆けた。
謙信「俺の容姿は両親のいずれにも似ていない。
南蛮人のような髪色をし、肌も白かった。日ノ本では誰もが持ちえない二色の目。
幼い頃より気性が激しく手が付けられず、教えてもいないのに戦の才に目覚めた俺を、母上は忌み嫌い、父上もあまり傍に置きたがらなかった」
「謙信様………」
謙信様が家族の話をするのを、初めて聞いた。
謙信様を象る全てが愛おしいと思う私にしてみれば、衝撃的な内容だった。
(小さい頃はお寺で暮らしていたと聞いたから、家族と何かあったんだろうとは思っていたけど、まさかそんな事情だったなんて…)
浴場の方から、違うカップルが睦み合う声が聞こえてきたけど、それが耳に入ってこないくらいショックだった。