第75章 異常(R-18)
皆、頭や髪を撫でてくるくらいで無理やり何かするなんてことはなかった。
信長様は多少強引な時もあったけど、断れば笑ってやめてくれたし。
(よくある話なら、謙信様もその気になれば…)
一族をまとめあげる当主だったんだから、人妻だろうが下働きの女の子だろうが望めば手に入れられたってことだ。
謙信様はそういう人じゃないって知っているのに、無意味な想像をしてちょっぴりもやっとした。
でも謙信様は知り合った頃からなんだかんだと女性だからという理由で優しくしてくれた。
私と佐助君が恋仲だと勘違いしていた頃、仲を引き裂くようなことはしなかったし、身体に触れる時も同意を得て触れてくれる。
「謙信様で良かったな……」
つくづくそう思う。
謙信「急にどうした?」
「いえ、大事にしてくださるので……」
薄い唇に小さな笑みが浮かんだ。
伏せた目を彩るまつ毛は、濡れて艶やかな雰囲気を放っている。
「さっきの三組目のカップルは、血が繋がっているような会話をしていて、それなのに最後までしちゃったみたいで…」
会話の流れ的に兄妹だった。
(それなのに、それなのに最後までしちゃってどうするんだろう)
他人事なのに、怖くないのかなって思う。
これには流石の謙信様も目を瞬かせた。
でもすぐにいつもの冷ややかな表情に戻った。
(もしかして…これもよくあること?)
現代での常識がこの世では通じない、のかもしれない。
謙信様の返答を待つ間、そんなことを思った。