第75章 異常(R-18)
「一組目は、旦那さんがいる女性が、他の男性とここに来てるみたいで…」
謙信様の眉間に皺が寄った。
謙信「つまり不倫していたと?」
「そ、そうみたいです。それなのに、その最後まで……」
言葉が続けられなくて両手で顔を覆う。
「子供ができても浮気はバレないから大丈夫!みたいな軽いノリでびっくりしました。
二組目はどこかの商家の旦那様と、そこで働いている女の人って感じで…。
ちょっと無理やりっぽく、その……始まってしまって…」
謙信「女を手籠めにして『妾にしてやる』とでも言っていたのだろう?」
「そ、そう!!!!謙信様、なんでわかったんですか?」
謙信「よくある話だからな」
「そ、そうなんですか?でも、ほんと、強引でビックリしました。
お店の人に声をかけてやめさせてもらおうと思うくらい」
謙信「無駄だ。こういう場所で、そのような野暮なことをしたら客が離れる」
「でも女の人は最初は嫌がっていたんですよ?」
謙信「『最初は』であろう?たとえ心がなくとも、富と力がある男に可愛がられれば一生安泰だ。
その女も最初は嫌がっていても、終いには受け入れていたのではないか?
だから舞も踏みとどまったのだろう?」
「そうですけど、なるほど…そういうものなんですね」
動揺した私がおかしいのかなと思うくらい、涼しい顔で『よくある話だ』と受け止められた。
謙信「だからお前を安土に残して越後に帰らねばならなかったあの時…。
信長がお前に手を出すのではないかと危惧したのだ」
「……?大丈夫ですよ、信長様はそんなことしません」
謙信「学習しろ。この時代、大抵の男はお前がここで聞いた通り、女を簡単に我が物にする。
女をそう扱うのが当然と思っているからだ。
信長は毎夜お前を閨に呼んでいた。囲碁をしていると言っても、いつか必ず手籠めにするだろうと思っていた」
「そうですか?信長様や安土の皆は、そんなことなかったように思いますけど。
そうか…私があんまり跳ね返りでどうしようもないから、女性として見てもらえなかったのかもしれません」
謙信「……それはありえんだろう」
「何か言いました?」
謙信「………」