第4章 看病二日目 効果のない線引
謙信「いや、お前と同じ言い方をすれば特に意味はない」
佐助が言った通りだ。俺はこの女を苛めるのが楽しいのかもしれない。
「どーせ、私は女らしくないです!」
謙信「男勝りとも思えないが?」
(何を言っているのだ。お前を象る全てが……)
ふと浮かんだ言葉を急ぎ打ち消し、考えぬようにする。
「それって励ましにもなりません!
いいんです、なんでも自分でやろうとするから可愛げがないって言われますし」
ふいっと顔を背けられ、唇が少し尖っているのが見えた。
(やれやれ、拗ねてしまったか)
さてどうしてやろうか。慰めるか、弄ぶか…。
しかし誰が『可愛げがない』などとこの女に言ったのだろう。
何故かそっちの方に気をとられた。
謙信「佐助がそのままのお前を好いているのならそれで良いではないか?
それとも佐助に『可愛げがない』と言われたか?
それならあいつの目が覚めるように一太刀浴びせても良いが…」
「えーと、お気持ちは嬉しいのですが佐助君はそんなこと言っていませんし、切りかかるのだけはよしてくださいね?」
慌てて否定したところを見ると、佐助に言われたわけではないようだ。
何やら嬉しそうな顔をしていたが、突然花が萎れるようになった。