第4章 看病二日目 効果のない線引
謙信様は手を差し伸べてくれたままだったけれど、鍋を火からおろして立ち上がった。
土間におっきりこみが入ったお鍋を置き、水を持って再び囲炉裏まで戻る。
お湯をはった鍋を火にかけて水を足していく。
視線は交わらず、なんとなく気まずさを覚えた時に、謙信様がポツリと言った。
謙信「その苦しみ。耐えきれなくなる前にどうにかしろ。話なら聞いてやる」
「は、はい。ありがとうございます。
でもこの悩みはきっと国へ帰れば解決すると思います。
ここを離れれば自然と気持ちに整理がつき、薄れていくものだと思います」
持ってきた水はお鍋の中に全部入った。
逸らしていた視線を謙信様に向けるしかない。
思い切って顔をあげて胸の内を伝えた。
元の時代に戻れば今のように些細なことで一喜一憂することもないのだから。
ここまで惹かれてしまった人だから忘れることはできないけど、時間がたてばなんとかなる。
謙信「その言い方はまるで…」
何か思い当たった素振りを見せたので慌てて立ち上がる。
「しゃべりすぎてしまいました。佐助君が起きたら教えて下さい」
謙信「……わかった」
そのあとは何事もなく過ぎ、看病2日目は終わった。