第73章 取り払われた憂い
謙信「そのままで良い。何も気にする必要はない。
それに畑仕事や港町の往復で以前より身体がしっかりしているぞ」
足首から脛を辿り、膝上まで撫であげられた。
ゾクゾクとした快感を我慢していると、謙信様はフッと笑った。
細い指先が足袋の留め具をひとつ、またひとつと外していく。
生地を少し引っ張られて足を浮かせると足袋はするりと脱げて、両足とも素足になった。
謙信「先ほどの話だがお前を愛してもいいか?
舞が孕んだら隣町の産婆に世話になれば良い。茶屋での話を聞いた時、そう考えたのだが」
「でも安くないお金がかかるって………」
生活に困らない程度に収入はあるけど、余裕があるわけじゃない。
細々とした額の貯金ができるくらいだ。
だから話を聞いた時、残念だと思いながらも選択肢から外した。
謙信様がふっと頬を緩め、少し自慢げな笑みを浮かべた。
謙信「なにも心配しなくても良い。茶屋の女に如何ほど金が要り様(いりよう)か聞いたが、たいした額ではなかった。
500年後に居る間に、貨幣の一部を金(きん)に替えておいた。
金ならいつの時代でも使えると思ってな」
「き、金ですか!?聞いてないです…」
謙信「俺と佐助しか知らない。いざという時の資金だ。
龍輝達の代まで困らない程度には持ってきたが今後どうなるかわからぬと、しまってある。
お前があくせく働く姿を見て、何度『必要ない』と言いそうになったか…。悪かったな」
日に焼けた手を申し訳なさそうに撫でられた。