第73章 取り払われた憂い
(キスだけで腰が抜けるなんて恥ずかしい…)
謙信様と出会う前はこんなことなかったのに。
現代で謙信様に愛され続けて、自分の身体は本当に変えられてしまった。
謙信様を欲するように、与えられた刺激を何倍にも増幅させ、熱をあげるように…。
唾液を吸い取られたあと、謙信様の唾液がトロリと流れ込んできて、ごくりと喉を鳴らして飲み込んだ。
うっすらと目を開けると、謙信様が嬉しそうに目を細めている。
欲情の熱を隠そうともせず、二色の瞳が私を捕えている。
(もっと…)
唾液を求めて舌を伸ばす。
謙信様の口内に舌を入れ、舌下(ぜっか)を刺激すると、謙信様の身体がピクリと動いた。
ジワリと分泌された唾液を舐めとっていると、お酒を飲んだ時のように身体が熱くなってきた。
ペタリと座り込んだ畳の上でひたすら唇だけを合わせてしばらく、謙信様は私を抱き上げて布団の上に運んでくれた。
普段使っている布団とは違う感触に、理性が戻ってきた。
「謙信様、どうしてこんな急に…。気分が悪いというのは?ここは宿ですか?」
矢継ぎ早に質問する私に謙信様は外套の留め具を外す手を止めた。
謙信「多少動揺していたが、本当に気分が悪かったわけではない。
舞を引き留めるための方便だ。
ここは出合い茶屋と言って、お前たちの時代で言うラブホのようなものだ」
「ラブホ…」
謙信様の口から『ラブホ』という単語が出てきてびっくりしたけど、そういえば一度だけ行ったんだったと懐かしく思い出した。
でもつまり、ここは『そういうことをする場所』だ。
(やっぱりさっき聞こえた喘ぎ声、気のせいじゃなかったんだ)
謙信様はそのまま続けた。