第73章 取り払われた憂い
(姫目線)
「んっ、ふ……」
謙信様の気分が悪いと連れてこられた怪しげな宿。
ここがなんなのか聞く機会を与えられず、抱きすくめられ口づけられた。
帯を乱雑にほどくシュル!シュル!という音が部屋に響き、私の身体もそれに合わせて後ろに引っ張られた。
帯をほどく力にふらついても口づけは止まない。
「ん……」
(謙信様はここで私を抱こうとしている…?)
口づけを受けながら、ボンヤリと考えた。
産婆さんが町に居ないと聞いたのはかれこれ1か月前。
謙信様に触れて貰えなくなってから2か月以上たっている。
(口づけだけで全部溶けてしまいそう……)
膝から力が抜け、身体がガクンと沈んでも、謙信様は私を追いかけて唇を離してくれない。
帯が解けて畳に落ち、謙信様は私の頬を両手で包んで口づけてくる。
頬にあたる手が熱い。
「ん、はぁ、謙信様」
謙信「舞、舌を出せ」
「こ、こうですか……ぁ」
そうっと出した舌を謙信様の唇が柔らかく甘噛みして、舌同士の先端を合わせ、絡められた。
口内でするのと、舌を出してするのとでは全然違う感覚だ。
出した舌を食まれ、舐められ、身体を固くして応えていると、手が頭の後ろに回りひき寄せられた。
謙信様が顔の角度を変え、離れていた唇がくっついた。
「んん…」
柔らかな唇を感じたのも一瞬で、すぐにヌルっとした舌が唇を割って口内にはいってきた。
舌を探られ、唾液を搾り取られそうな勢いで吸われた。
「んっ、んっ」
すべて奪われそうな感覚に畳にへたり込んだ体から、更に力が抜けた。