第72章 おまけ
(こうなったら仲良くしている女中さんと一緒に行ってこようかな)
信長「舞、言っておくが宿には貴様と『男』が行くと話してある。
部屋に布団は一組しか用意しないよう指示しておいた。
女中や、男友達と行こうとすれば後悔することになるぞ?」
「う……」
女中さんや、佐助君と行くという退路を断たれてしまった。
「酷いです、信長様……」
信長「貴様が結論を出さずにフラフラしている方が酷いと思うがな」
「?」
広間に集まった面々が切なげな表情をしているのは、私からは見えていなかった。
信長「覚悟を決めて、誘いに行け。
誰を選ぼうと文句は言わん」
「そんな…」
信長「……好いた男と共にあるのが女の幸せであろう?
うじうじと思い悩んでいる時間があったらぶつかっていけ。願いが叶わなかった時は俺が貰ってやる。
これが俺からのお年玉だ」
悪戯な表情を浮かべているけど、信長様の緋色の瞳はどこか不安げに揺らめいている。
私がふられて、本当に貰い受けなければいけなくなったらどうしようって不安なのかもしれない。
そんな迷惑はかけられない。
「ふられたら落ち込むと思いますけど、立ち直ってみせますので。
好きでもない女を貰ってやるなんて言わないでください、信長様。
好きな人と一緒にいるのが幸せなのは男の人だって同じなんですから、ね?」
信長「……」
家康「はぁ……ほんっと気づいてないよね」
慶次「鈍すぎるな。信長様を袖にした女なんて初めて見た」
信長「ふっ、では各自御殿へ戻れ。舞が誘った者は三日間仕事を免除する。
三日間、口説かれてこい」
皆はかしこまった返事をして広間を出ていった。