第72章 おまけ
「それではまた……。越後の皆にもよろしくお伝えください」
佐助「わかった。謙信様達も心配していると思うからとんぼ返りするよ」
「またね、佐助君。時々会いに来てね?」
佐助「そんな寂しそうな顔しないで。またすぐ来るから」
兼続さんは、私達を見て不機嫌そうに眉をしかめた。
兼続「謙信様の想い人に横恋慕する気か、佐助」
「横恋慕っ?!ちがいますよっ」
慌てて否定する。
佐助「友人です。謙信様に誤解されたら斬られますので、今の発言は撤回してください」
「佐助君とは友達です。それに謙信様の想い人が私なんてありえないですし」
佐助「え?」
兼続「?」
「私みたいな五月蠅くて、落ち着かない女なんて、謙信様が好きになるわけないじゃないですか。謙信様に失礼ですよ、ふふ」
佐助「あんなにわかりやすく好意を示されて気づいていないのか?」
兼続「……謙信様は何故このような鈍感女を…」
何かぼそぼそ呟かれたけどよく聞こえなかった。
「さ、変な誤解していないで気をつけて帰ってください。
それじゃあ、安土の皆も心配していると思うのでこれで」
二人にお辞儀して背を向ける。
晴れ着の裾を持ち上げ、汚さないようにソロソロと歩いていると…
兼続「……おい」
突然肩を叩かれた。
「ひゃっ!?だ、駄目じゃないですか。もう門から見える場所なのに!」
兼続「荷物を増やして悪いが、これをやる」
凄く重い紙包みを渡された。
「昨日お年玉をもらいましたが…?」
兼続「いいから黙って受け取れ」
「ありがとう、ございます」
兼続さんは佐助君と合流して去っていった。
(お、重い~)
荷物が増えて歩きにくいこと、この上ない。
でもすぐに門番の人がよろよろ歩く私に気が付き、駆け寄ってきてくれた。
門番1「舞様っ、いったいどちらへ行っていたのですか!?
誘拐したという文が届いて城は大騒ぎですよ」
「申し訳ありません。色々と、あちこち行ってきました」
門番2「とにかく秀吉様にお知らせをしてきますっ」
「お、お願いします」
すぐに垂れ目を吊り上げた秀吉さんが走ってくるだろう。
そんな想像をしながら、でもそんな普通な日常が一番だな。とホッと息を吐いた。