第72章 おまけ
――――
――
ガタン
駕籠が置かれた振動で目が覚めた。
(ん、もう着いたのかな)
駕籠の外に声をかけようとして伸びてきた手に強引に外に出された。
「え、きゃっ?!」
たたらを踏んで、手の持ち主に身体をぶつけてしまった。
帰蝶「やはり安土の姫か」
引っ張ったくせに、今度は突き放された。
むっときて相手を睨みつけると帰蝶さんが立っていた。
「なんで帰蝶さんが…?佐助君と兼続さんは?」
帰蝶「駕籠かきの休憩中を襲撃して駕籠ごと奪った。
今の今まで、よく眠っていたものだな。眠り薬でもかがされたか?」
連日の寝不足と酒宴続きだったとは恥ずかしくて言えない。
(でも佐助君なら必ず私を探し出してくれるはず…)
『遅くとも3日には安土に返す』そう言ったんだから。
佐助君は絶対約束を守ってくれるはず。
元就「この駕籠は目立つから捨てるぞ。ほら馬に乗れ」
「も、元就さんまで…。なんで私を攫うんですか?」
元就「正月だなんだと浮かれている連中からお前を攫ってみせれば、一泡ふかせられるだろう?
安土には既にお姫さんを誘拐したと文を届けておいた。これから何が起こるか楽しみだ」
「そ、そんな…」
帰蝶「正月明け早々、信長は俺達が密かに武器弾薬を保管している場所を襲撃する計画を立てている。
一か所だけでなく、同時多発に日ノ本各地にある保管庫を潰そうとしている」
「知らなかったです、そんなこと……」
元就「そうだろうよ。襲撃を受けても寝ているようなお姫さんに戦の『い』を教えたところでなんの得もないだろ。時間の無駄だ」
(そんな言い方しなくてもいいのに)
帰蝶「とにかくお前は近くの隠れ家に連れて行く」
「え、や、嫌ですっ!」
(誰か助けてっ)