第72章 おまけ
蘭丸君に連れて来られたのは安土の外れにある古いお寺だった。
城を出る時は担がれて出たけど、途中で用意されていた駕籠に乗せられた。
30分ほど移動して、駕籠から降ろされた。
蘭丸君が申し訳なさそうな顔をしている。
蘭丸「連れ去るようなことをしてごめんね。
信長様達には『二日酔いが酷くてこのまま休みます』ってことにしてある」
「理由を聞いてもいい?」
蘭丸「時々顕如様が君のことを聞くんだ。
以前、城下で舞様に刃を向けちゃったことを気にしてるみたい」
「少し怖かったけど、もう気にしてないよ?」
蘭丸「今の言葉をそのまま顕如様に伝えて欲しい」
「うん、わかった!」
蘭丸「ありがとう!門徒達の中には君の顔を知っている人もいるから、その扇子で顔を隠してくれる?」
滅多に使わない扇子の出番だ。
姫のマストアイテムだと今朝は女中さん達に持たされたんだった。
「こんな感じ?」
蘭丸「うん、良い感じ♪様になってる」
「慶次と歌会に行ったことがあるの。
まさかこんな時に役に立つなんて思ってもみなかった」
蘭丸君に手を引かれ、豪奢な晴れ着姿で歩いていると、門徒の人達があれは誰だと呟いている。