第72章 おまけ
雨戸は前もって開けてあったらしく、すぐに満点の夜空が見えた。
「秀吉さん、景色を見たいんだけど立ってもいいの?」
秀吉「ああ、いいぞ。ただしお前は酔っ払いだ。
危なくないよう、俺が手を引いてやる」
「ありがとう、秀吉さん」
舞はふらつく足で立ち上がり、障子戸の近くに案内された。
夜空には美しい星空が広がり、通常ならばこの時間は真っ暗になっている城下も大晦日のせいか明かりが灯っている。
「綺麗だねぇ…」
冷えて澄んだ空気を吸い込むと、胸がすっとした。
外の景色に夢中になっている舞の傍に女中が火鉢を置いた。
「ありがとうございます」
信長「いちいち礼を述べなくとも良い。貴様は姫なのだから」
手を取ってくれた秀吉はいつの間にか下がり、信長が舞の傍に座っていた。
「根は庶民なので…」
信長「いつまでも慣れぬな?」
「ここに来て、まだ半年ほどですから」
信長「あれからまだ半年しかたっておらぬのか。
舞が来てからというもの城が毎日騒々しいが、それも慣れた。
……よく尽くしてくれたな」
「こちらこそ突然お城に住まわせてもらい、ありがとうございました」
頭を下げた舞を、信長は盃を飲み干してから静かに見おろした。
信長「良い拾い物をしたものだ」
「そ、そうですか?」
信長「貴様が来てから城の雰囲気が変わった。
良い方向にな…」
舞は『そうですか?』と首を傾げた。
蘭丸「前はもっと殺伐としていたんだよ。
舞様が来たら城の雰囲気が優しくなった気がする」
三成「舞様がいらっしゃる場所は可愛らしい花が咲いたようで、まるで春の使いのようです」
「やだ、三成君、言い過ぎ…」
慶次「三成…お前言う時は言うんだな。
サラッと言うからびっくりしたぜ?」
三成「思っていたことをそのまま言っただけですが…」
「……//////」
政宗「ははっ、まさか三成に出し抜かれるとはな。
舞の反応を見る限り満更でもなさそうだな?」
「ち、違うよ……ただ、照れただけ」
酔いが回っていた舞は、三成のストレートな表現に真っ赤になっている。