第72章 おまけ
光秀「秀吉、お前がさっきから舞に飲ませているのは信長様に献上された強い酒だぞ」
秀吉「っ、気づいていたなら早く言えっ」
光秀「わかっていて飲ませているのだと思っていたぞ?
酔いつぶれたところを部屋に案内して……」
光秀の口の端が意味ありげに吊り上がった。
慶次「おいおい、秀吉がそんなことする男だったなんてがっかりだな」
秀吉「馬鹿っ!俺がそんなことするわけないだろう?」
「秀吉さん、何怒ってるの?私、そんなに酔ってないよ?
ね、光秀さん」
光秀「そうだな。飲み足りないのなら、ほら、もっと飲め」
「ありがとう、光秀さん」
秀吉「舞、やめろ!光秀が飲んでいるのは南蛮の使者から貰った、うぉっか…」
とめようとした手は間に合わず、舞は注がれた酒を飲みほした。
「うーーー、すっごい強い!キレッキレだね。すかっとする」
秀吉「……大丈夫か、舞」
秀吉が慌てて湯呑に水を入れ、光秀はくくっと肩を震わせている。
その様子を、ある者は呆れ、ある者は微笑ましく見ていた。
家康「光秀さん、やめてくださいよ。介抱する羽目になるのは俺なんですから」
光秀「おや、心外だな。飲み足りないから酒を注いでやっただけだ」
三成「舞様が楽しそうに笑っているお姿は、見ているだけで和みますね」
家康「いや、あれはただの酔っ払いだし。
っ!?三成、何しようとしてんの」
三成「飲みすぎだというのでお茶を煎れようかと…」
慶次「……それはやめておけ」
家康「俺が淹れるから三成は座っていろ」
慶次がすかさず三成の手を捕らえ、家康は三成の手から急須をとりあげた。
光秀「大変だな」
家康「わかってるなら、誰かさんを酔っ払いにしないでください」
信長「ふっ、今年の大晦日は随分と騒々しいな。
まぁ、それも一興。そろそろ刻限だ、窓を開けよ」
信長の一声で控えていた者達が、障子戸を開けた。