第72章 おまけ
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―――宴の席
「は、はぁ、なんだかどっと疲れが……」
光秀「なんだ、昼寝をしたのに疲れているのか?」
「なんていうか昼寝から起きて、ここに来るまでの間が目まぐるしくて…」
光秀「…消えて良かったな?」
「なんのことですか………って、光秀さん!?聞いていたんですか?」
秀吉「何の話だ?」
「な、なんでもないよ、秀吉さん。
ところで温かくしてくるように言われたんだけど、どうしてなの?」
光秀に恨みがましい目線を送りながら、舞は秀吉にたずねた。
今夜の舞の席は秀吉と光秀の間だ。
秀吉「もう少しすると、窓を開けて除夜の鐘を聞くのが恒例なんだ。
外気がもろに入ってくるからな、そのための厚着だ。
舞はちゃんと着てきたか?」
秀吉は確認するように舞の着物に目をやる。
「うん、女中さんがいっぱい着せてくれたよ。
だから今は暑いくらい。そっかぁ、この時代でも除夜の鐘ってあるんだね。
うれしいなぁ」
秀吉「500年後でも除夜の鐘はあるのか?」
「うん!私も大晦日の23時くらいになるとお寺にいって鐘をつかせてもらっていたよ」
秀吉「23時………?」
「あ、ごめんね。日付が変わる少し前ってこと」
秀吉「寺の者でもないのに鐘をつくのか?」
「うん、人気があるお寺は前もって予約が必要だけど、私が行っていたお寺はフラッっと行っても大丈夫だったよ」
秀吉「除夜の鐘は108回だろう?
もし鐘をつきたい人間が200来たらどうするんだ?」
「……そうだね、そういう時はどうしていたんだろう。
108回ついたら、そこまで!にしてたのかな。
もしかしたら200回鐘を鳴らしていたのかも?」
秀吉「お前が居た時代は意外と緩いんだな」
「や、わかんないよ?私もお寺の人じゃないから。
もしかしたらきちっと108回にしてたかもしれないし」
秀吉「わかったからそう慌てるな。ほら、もう少し酒を飲んで温まっておけ」
「ありがとう、秀吉さんって優しいなぁ」
秀吉「酒を注(つ)いでやっただけで優しいとは言わないだろう?」
「雰囲気とか口調とか、ちょっと垂れた目も好きだなぁ」
秀吉「…お前酔ってないか?」
秀吉が確かめるように舞を覗き込むと、目がとろりとしている。