第72章 おまけ
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女中「舞様、舞様」
「うーん、白黒歌合戦が……」
女中「白黒……?歌合戦?
舞様、起きてくださいませ。
そろそろ宴の仕度をしなくてはなりませんよ」
「ん~~………宴…え、宴っ?!
も、もうそんな時間なのっ!?」
舞は勢いよく起き上がり、暗くなっている部屋の中を見渡す。
もう一人の女中が行灯に火を灯そうとしている。
女中「あと半刻程です。ささ、お仕度しましょう。
私達も手伝います」
「わわ、すみません」
襷と前掛けを急いで取り外した。
(あれ、布団が…誰がかけてくれたのかな)
女中「信長様より暖かい格好で来るようにと言われておりますので、ご用意しました」
「な、なんでも良いです。遅刻しないようにしなきゃっ!
すみません、頬に枕の跡とか残っていませんか?」
女中「枕の跡はありませんが、その……よだれの跡が…」
気まずそうに指摘され、舞は飛び上がった。
「え!?大変、着替えの前に拭かなきゃ」
女中「こ、こちらにお湯の準備をしてありますのでっ」
「あ、ありがとうございます!うわぁ…前髪に寝ぐせが…」
女中「大丈夫でございます!私達にお任せください」
「はい、お願いしますっ!」
慌ただしく舞が準備をしている。
光秀「……ふっ…」
廊下で待っていた光秀は、笑いをかみ殺してそれを聞いていた。