第4章 看病二日目 効果のない線引
(謙信目線)
朝の件があったせいか、舞とは昼餉の時刻までは会話と言う会話もなく過ごした。
佐助「謙信様、機嫌が悪いように感じるのですが気のせいでしょうか」
謙信「誰の機嫌が悪いだと…?」
機嫌が悪くなるようなことは何もなかったのだから、そんなことあるはずがない。
赤い顔をした佐助を睨みつけてやる。
佐助「眼鏡をしていなくても謙信様の方からビシビシと不機嫌オーラが漂ってくるんです」
謙信「おーらが何かわからんが、不機嫌ではない」
佐助「もうその声と口調が不機嫌です」
警告を発した後から舞が口を利かず、笑いもしなくなった。
近くにくることもなく土間で何かしている。
距離をおくことに成功したというのに、なぜこうも心が晴れないのだ。
晴れぬ心を佐助に逆なでされたせいで余計にも苛々してくる。
謙信「大人しくしないとその口、縫い付けるぞ」
佐助「それは困ります」
さして怯えもせず、佐助はまた目を閉じた。
高熱のせいで体力を奪われているのだろう。目を覚ましている時間が極端に短い。
本当に治るのだろうかと眺めていると、
「謙信様、お昼御飯の時間ですよ!」
間近で能天気な声がして振りあおぐ。
舞はお湯が入った鍋を下げると、土間から持ってきた鍋をかけた。
「佐助君は寝ちゃったんですね。さっきまで起きていたのに、残念」
肩を落とす仕草、口調はいつもと変わらないままだ。
何も変わらないことに俺のほうが動揺している。