第71章 謙信様との逢瀬
長椅子に並んで腰かけている私達は、少し意識すれば身体に触れられる。
謙信様の方に少しだけ身体を寄せてお団子を食べる私を、謙信様は甘い笑みを浮かべてみつめてくれる。
見惚れる程美しい人に見つめられ、胸がいっぱいだ。
(ああ、幸せだなぁ)
視線を合わせては笑い合い、触れているような、いないようなもどかしさが胸をくすぐった。
謙信様となら特別何かしなくても、一緒にいて、見つめ合っているだけで幸せだ。
「蝦夷でこういう暮らしをしていると、改めて結婚式を挙げておいて良かったなと思います」
謙信「そうだな…。城に戻るのでなければ再度祝言を挙げる必要はない。あの時挙げておいて良かった。
白無垢姿を見られないのは残念だがな」
残念そうに息を吐き、謙信様がお茶を一口飲んだ。
湯呑を持ち上げる仕草は優雅で、湯呑に口をつける様子も、横顔も綺麗だ。
お茶を飲みこんで喉ぼとけが動いた。そんな些細なことさえ格好良い。
謙信「どうした、そんなにじっと見て」
旦那さんに見惚れていましたなんて言えない。
「な、なんでもないです!
でも不思議ですよね。あの結婚式は1年半くらい前の話なのに、時の流れではずっと先の500年後の出来事なんですもの」
記念写真を撮るために外に出た時の雪景色が忘れられない。
「私達が生きている先に、あの美しい雪景色があるんですよね。
なんだか信じられません。綺麗だったな……」
私と謙信様は結婚式の写真を小さく縮小して、いつも持ち歩いている。
写真を入れている胸元に手をあてると、あの時の嬉しかった気持ちが蘇った。