第71章 謙信様との逢瀬
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突然舞い込んできた謙信様との逢瀬。
二人きりの時間が過ごせると、自然と気分は上向きになり、足取りが軽くなった。
「謙信様とデートなんて、現代で映画館デートして以来ですね。
蝦夷に来てからは毎日が本当に忙しくて、1年があっという間でした」
謙信「そうだな。あちらでの日々が昨日のことのように思える」
葉先が色づき始めているのを見て、ここに来て一年が経ったんだと実感する。
(あっという間に感じたのは、それくらい充実した毎日だったってことだよね)
自然の色合いを眺めて楽しんでいると、謙信様がふと気づいたように足を止めた。
謙信「髪が伸びたな」
背中の半ばまであった髪は、こちらに来てからさらに伸びた。
帯の結びに届いている髪を謙信様がそっと触れてきた。
謙信「知り合う前だったとはいえ、このように美しい髪を切った己が信じられない。
今では髪の毛一本まで愛しい」
「か、髪の毛一本までなんて…言い過ぎです、謙信様」
謙信「本心だ」
髪をすくい、口づけてくれた。
伏し目がちな表情に鼓動がうるさくなる。
まだデートは始まったばかりなのに、私の心臓はもつのだろうか…。