第69章 毛玉の家来
(第三者目線)
結鈴「きゅーすけ~」
龍輝「いないねぇ」
昼過ぎに散歩にでかけたきゅーすけが夕方になっても戻らない。二人が心配して探していると、港町から帰ってきた男が居た。
龍輝「あ!信長様だ!」
結鈴「おかえりなさい、信長様!」
信長「どうした、もう日が沈むぞ。家に入れ」
結鈴「きゅーすけが居ないの」
信長「この毛玉のことか」
信長は懐に入れていた手を二人に差し出した。『毛玉』と言われたきゅーすけはスヤスヤと寝ている。
手のひらにのる小さな体では、確かに『毛玉』と言われても仕方がない。
信長「里山のはずれの草むらで眠っていた。
まだ子猫だ、とって食われるぞ」
龍輝「わあ、ありがとう信長様」
結鈴「良かった~」
龍輝がきゅーすけを受け取ると、目を覚まし、またどこかへ行こうとする。
『にゃー』
龍輝「あ、駄目だよ。もう夜になるからお家に帰ろう!」
逃げられないうちにと、龍輝が走り出した。
結鈴「あ、まって」
信長「結鈴」
駆けだそうとした結鈴を信長が呼び留め、小さな包みを渡した。
信長「土産の大福だ。結鈴と龍輝、舞とで食べるといい。
謙信は甘い物は好まん。3つ買ってきた」
大福と聞いて結鈴の目が輝いた。
結鈴「わあ、ありがとう、信長様」
包みを受け取り、信長と並んで歩いた。
小さな足で歩く結鈴に合わせて、信長の歩調も緩くなった。
信長「ところで何故あの毛玉はきゅーすけと名付けられたのだ?」
結鈴「畑にキュウリがたくさんできてたから!
結鈴がつけたんだよ」
単純な理由に信長がふっと笑いをこぼした。