第68章 たとえ離れても…
お言葉に甘えて台所を借りて経口補水液を作った。
町人「こんなんでいいのか?」
「はい」
あっという間にできた経口補水液に、台所を貸してくれ人は懐疑的な目をした。
「人間の体液を補うには真水では駄目なんです。説明はあとでしますから、これを運んで飲ませてください」
話を聞きつけた野次馬の人達が協力してくれて、倒れている人達のところへ運んでくれた。
町人「あんたはそこに居な。船の上は女が見たら卒倒しそうな有様だ」
乗船しようとしたけど、引き留められ、陸で待つことにした。
蘭丸君は護衛なので私の後ろに立ち、見守っている。
匙を使って飲ませている人も居れば、いつの間に漏斗(ろうと)のようなものを持ってきて飲ませている人も居た。
経口補水液が何かわからなくても、命が助かる可能性に賭ける姿勢に胸打たれた。
1人でも助かる人が居れば…………
強く願ったその時だった。
ザブン!
凪いでいた海面が突然大きくうねり、船を襲った。
助けに回っていた人達が声を上げて、海に放り投げられた。
「船がっ…」