第68章 たとえ離れても…
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蘭丸「舞様♪これ貰ったんだ。
今年はこの魚がどこも大漁で、モノが余ってるんだってさ☆ちょっと大変だけど帰ったら煮干しを作ろう」
市に一緒に来ていた蘭丸君が、漁港のおばさんからカタクチイワシを貰ってきた。
箱を覗いてみると鮮度は申し分ない。
以前作ったものが無くなってきていたので丁度良かった。
「うん!今日は早めに切り上げて帰ろうか。
このお魚、きゅーすけに悪戯されないようにしなきゃ」
蘭丸「すっかり傷も治って、やんちゃになってきたよね、きゅーすけ」
「うさぎにじゃれつくから謙信様のご機嫌が悪くなるんだけどね」
相変わらず謙信様にはうさぎをひき寄せる何かがあるようで、畑仕事で外に居ると一羽、二羽と現れ、お昼の休憩時になると数え切れないくらいになる。
「邪魔だとかなんとか言っているけど、信長様がうさぎを捕まえて食料にするって言ったら刀を抜いたからびっくりしちゃった。
本当は可愛がってるんだよね、フフ」
きっと春日山城でも同じだったに違いない。
春日山城には行けなかったけど、同じシチュエーションを見ていると思うと嬉しくなる。
蘭丸「そういえば、この間きゅーすけの首の後ろを掴んで『俺のうさぎに手を出してはならん!』とか言ってたよ。
猫に言っても仕方ないと思うんだけど…」
「やだ、謙信様ったら…」
雑談しながら最低限のものを買い、帰ろうとした時だった。
「向こうが騒がしいね。何かあったのかな」
海辺が騒めいていたので、行ってみることにした。