第68章 たとえ離れても…
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裸足になって波打ち際を歩き、貝を拾ってみたり、打ち上げられた海藻をつついたりと子供達は忙しい。
私と謙信様は交代で二人に付き添い、賑やかな時間を過ごしていた。
「そろそろお昼だよー!
あっちの木陰でお弁当食べよう?」
龍輝「やったー!」
結鈴「お腹すいたー。喉かわいたー」
「はいはい」
現代に居た頃よりも運動量が増え、龍輝も結鈴もご飯を食べる量が増えた。
ついこの間までおにぎりをひとつ食べると『もうお腹いっぱいー』って言っていたのに、おにぎりを二つ食べて、さらにおかずも食べている。
時々『たこさんウインナーが食べたい』というから困ってしまうけど。
龍輝「あー!!さっき作ったお山が!!」
波から遠い場所に作った砂山が、ご飯を食べているうちに波にさらわれて小さくなっていた。
謙信「潮が満ちてきたな」
謙信様が立ちあがり、周辺を見渡した。
謙信「龍輝、結鈴。波打ち際で遊ぶのはソロソロ終いするぞ。
波に攫われては大変だからな」
龍輝・結鈴「「はーい」」
「……」
潮が満ちる時は少しずつ少しずつ、目にはたいした違いは映らないけど、いつの間にか波が迫ってきている。
子供心にそれが怖いと感じたことがあった。
気が付くと大きな波に連れていかれる気がして…。
海で遊ぶのを諦め、二人が草履を履いて木登りを始めている。
水から離れて遊ぶ姿に知らず知らず、ホッと息を吐いた。