第67章 里山での暮らし
結鈴「いたいっ!!!!」
止まっていた涙がまた溢れてきた。
「もう少しの我慢だから頑張って?ばい菌がはいると大変だから」
結鈴「や、やだやだ!もういい!」
足をバタバタさせて嫌がる結鈴に、信長が声をかけた。
信長「では俺が抱いていてやるからしがみついていろ」
「え」
信長の発言に驚いて、舞の手がピタリと止まった。
結鈴「しがみついてれば痛くないの?」
信長「痛さは変わらんだろうが少しは怖さが減るだろう?」
結鈴「うーーーー、じゃあ信長様に抱っこしてもらう」
「こら、何、『仕方ないなぁ』みたいな顔してんのよ!
信長様に抱っこしてもらうなんて、ありがたく思わなきゃ」
舞が怒るのをサラリと流し、結鈴が信長の膝に乗った。
振り返って信長を見ると、
結鈴「信長様、怖いからギューっとしててね」
赤い瞳が温かさを滲ませた。
信長「この俺を恐れずにギュッとしろなどと…、やはり舞の娘だな」
途端に双子が反応した。
結鈴「え?ママ、信長様にギュっとしてって言ったことあるの?」
龍輝「えー、いいなー。僕も信長様にぎゅっとしてもらいたい」
「の、信長様、ゴ、ゴホン!!」
舞がわざとらしい咳ばらいをした。
囲碁の後、天守で眠ってしまったことはあったけど、あれは別に舞が望んで『ぎゅっとして』貰っていたわけではない。
動揺が手に現れて、舞の手から包帯が落ちた。
信長「ふっ、舞、風邪でもひいたのか?
早くせんとあの男が帰ってきくると五月蠅くなるぞ。
傷薬をさっさと塗れ。包帯は俺が巻く。
龍輝、そのさらしを4つ折りにして傷口にあてろ」
龍輝「よつおり?」
「半分にして、また半分ね。ママがハンカチを畳む時にやってるやつだよ」
龍輝があてたさらしの上から信長が手早く包帯を巻いていく。
痛々しい傷が清潔な布の下に隠れ、結鈴が安心したように身体の力を抜いた。