第67章 里山での暮らし
信長「誰に対しても物怖じせずに物を言い、怒り、笑っていた。
武器を持たずに、刀を持った相手につっかかることもあったな。
お前の母は危なっかしくてかなわん」
結鈴「ママって危ない人なんだね、ふふ」
涙の筋を頬に残したまま、結鈴がクスクスと笑った。
信長が手ぬぐいを出して頬を拭いてやると、結鈴がびっくりした顔をした。
信長「そうだな。危なっかしいが乱れた世に染まらず、真っすぐに生き、清らかに笑っていた。
結鈴も母に似ると良いな?」
結鈴の薄茶の目と、信長の緋色の目が合った。
信長「…もうすでに似ている気もするがな」
少しだけ緩んだ目元に、結鈴がフフっと笑った。
結鈴「そっかー、信長様はママのこと好きだったんだね」
信長「……………は?」
結鈴「光秀さんとか信玄様、佐助君もね、時々同じ目をするんだ。
ママってモテモテなんだねー?」
目を瞠っていた信長だったが、やがて肩を震わせて笑った。
口元にニヤリとした笑みを浮かべ、斜めに視線を流すように結鈴を見た。
幼い結鈴でも『かっこいいなぁ』と想わせる姿だった。
信長「くく…似ているようでその勘の鋭さは似ておらんな。
舞にその才能があれば、さぞかし面白いことになるだろう」
結鈴「そうかなぁ、パパが凄く怒る気がするよ?」
信長「俺はそれが『面白い』」
結鈴「あー、信長様、ママが困っているのを見て楽しむんでしょー?
苛めちゃだめなんだから~」
結鈴が口を尖らせたところで舞と龍輝が戻ってきた。
舞が傷をキレイに洗い消毒をすると、結鈴が飛び上がった。