第67章 里山での暮らし
(第三者目線)
結鈴「あっ!!」
龍輝と追いかけっこしていた結鈴が躓いて勢いよく転んだ。
龍輝が戻ってきて結鈴の足を見ると両膝が擦り剝け、血が出ている。
脛も擦って、斜めに線を引くように薄皮が向けていた。
結鈴「痛いっ、ふえぇ、ママ…」
この時間、謙信は港町に出ている。
家に居る舞のところに行こうとして立ち上がり、しかし結鈴は痛みで動けなかった。
龍輝「結鈴、待ってて。ママを呼んでくるから」
結鈴「ふぇ、龍輝…」
心細そうに泣く結鈴に、龍輝はヨシヨシと頭を撫でた。
光秀が頭を撫でると結鈴はいつも嬉しそうに笑うから、真似をしたらしい。
龍輝「全然効き目ない…。とにかく待ってて!」
結鈴は笑うどころか余計涙をこぼし、龍輝は急いで走り出した。
龍輝の姿が遠ざかっていく方向に、結鈴も足を引きずりながら歩き出した。
草履がズズ…ズズ…と擦れる音を出し、見ると足の甲や、指趾も皮がめくれているところがある。
面倒くさいと足袋を履かなかった代償だ。
さらに結鈴がしゃくりあげながら泣いた。
結鈴「ふえぇ……パパ、ママ、信玄様…光秀さん」
こんな怪我をしたら直ちに心配してくれる面々が誰も居ない。
結鈴は悲しくなって立ち止まった。
痛くてもう歩けない。
立ち尽くして泣いていると、背後から歩み寄ってくる足音がした。
??「どうした、結鈴」
誰かなんて見なくてもわかる威厳のある声。
結鈴は顔を覆っていた両手を下げ、信長を見上げた。