第67章 里山での暮らし
謙信「はぁ…お前が愛らしくてたまらぬ。
他の者達を早く他の空き家に移させ、お前を思う存分愛でたい」
信長様達をお邪魔虫扱いしていて、今住んでいるこの家から追い出したいみたいだ。
「……謙信様。皆がお引越ししても、子供達が居ますからね?
くれぐれもお手柔らかにお願いします。起きられなくなったら朝食が作れなくなっちゃいますし」
春が着たら他の空き家を修繕し、それぞれ住まいを移すことになっていた。
食事作りは不得手な人が多いし、皆お仕事をしているのもあって私の役目だ。
謙信様は私が皆の分まで食事を用意することに良い顔をしなかったけど『適材適所です』と強引にそのお役目をもぎとった。
各自それぞれ作るなんて薪も時間も勿体ないし、特に光秀さんあたり、作って食べるなんてしない気がする。
謙信「手加減などお前相手では出来そうもないがな。善処しよう」
背後から回っていた腕が解かれ、くるりと体の向きを変えられた。
覗き込んでくる端正な顔立ちが曇っている。
慣れないことをさせる心配が、謙信様の中で積み重なっているのかもしれない。
謙信「舞は家事と針仕事、子供の面倒もみている。
畑仕事は片手間で良い。あまり無理はするなよ?」
「はい、わかりました!沢田さんの畑仕事を手伝って色々学びましたし、頑張りますね」
謙信「頑張りすぎるなと言っている。いいか、舞が少しでも無理をしていると感じたら、抱きつぶして数日動けなくさせるからな」
「…いえ、そこは普通に声をかけてください…。
そうしたらちゃんと休むようにします」
謙信「舞は身体が動く限りは動き回るからな。動けなくするのが一番の休養になる」
艶めいた視線を送られ、ドキリとする。
(ほ、本気だ!気をつけなきゃ)
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やがて遅い春が訪れ、畑仕事が本格的に始まった。
こまめに休養を取り、しっかり食べ、やりすぎないを徹底した。
そんな私を謙信様がちょっと残念そうに見ていたのがおかしかった。