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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第4章 看病二日目 効果のない線引


(謙信目線)

朝餉が終わるころになると、佐助の熱がまた上がり出した。
赤らんだ顔で苦し気に息をするあたり、余程辛いのだろう。

舞は心配顔で薬湯を飲ませ、布団を整え、と甲斐甲斐しく世話を焼いている。

佐助が横になる時も、背中や首の後ろに手を回して支えてやっている。


ジリ


謙信「……?」


違和感を覚え、咄嗟に胸を押さえた。


(なんだ?)


舞は朝餉の片づけを終えると掃除に取り掛かった。

昨日の様子を見る限り、ある程度片付かねばこの女は休まないだろう。
そう考え、囲炉裏と火鉢を片付ける。


この女、あれやこれやと手先は器用だが火の扱いは不得手のようだ。
生活する上で火を熾す、消すというのは基本中の基本にもかかわらずだ。

それでいて料理はできる。
味も悪くない。

一緒に居る時間が長くなる程、この女の謎は深まるばかりだ。


「そういえばマスクを仕上げてきました。試しにつけてもらえますか?」


舞は手荷物からマスクを複数枚取り出し、一枚寄こした。
佐助と舞がつけていたのを見よう見まねでつけてみると、つけ心地は悪くなかった。

想像していたよりも息苦しさはない。
布と鼻が密着しないよう、工夫して縫われているせいだろう。


「多めに作ったのでお好きな時に取り換えてくださいね」


まとめて渡された物を見ると、一枚たりとも同じ柄、布ではなかった。


謙信「この布はお前が選んだのか?」


肌に直接触れる裏の生地は肌触りの良い綿か、絹が使用され、外側は品の良い色味の布でできている。

この女が気遣って選んだのだと一目でわかる。

昨日縫っていた佐助のマスクは同じ布、柄で作っていたというのに…


「はい。針子部屋にあった布の中から謙信様に似合いそうなものを選びました。
 お気に召さなかったら、作り直します」

謙信「良い、俺はモノにはあまりこだわらない」


作り直す必要はなかった。どの柄も、布も俺の趣味にぴたりとあてはまっていた。

馴染みの呉服屋でもあるまいに、不思議な女だ。



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