第66章 気づかいの理由は
そんな日が続き、流石に私も不審に思って佐助君に聞いてみた。
佐助「それはちょっと言いづらい理由があるんだ。その…ごめん」
佐助君が忍術を披露して一瞬で雲隠れしてしまった。
龍輝「あ!佐助君が消えた!?さすがだね、ママ!」
「うん、そうだね…」
(私には言いにくいこと?)
なんだろう。
とにかく皆、私が『疲れている』と思ってるのは確かだ。
はっと顔に手をやる。
(疲れてないのに疲れているように見られるってことは、もしかして年齢が肌にあらわれてきたのかな)
「そっか。だから佐助君は言いづらいって言ったんだ」
ここ数日の疑問がやっとわかった。
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――
次の日、佐助君に顔を合わせた時に張り切って宣言した。
「佐助君、私頑張ってお肌のお手入れするよ!
変な気遣いさせちゃってごめんね」
佐助君は無表情のまま動きを止めた。
(あれ、違ったのかな?)
「疲れていないのにそう見えるってことは歳なのかなって。
寒くて、乾燥している季節だから余計かもって…。違った?」
佐助君は納得したみたいで、眼鏡の奥でふと表情を和らげた。
佐助「そういう意味の『言いづらさ』じゃない。ごめん、変な誤解させて。
舞さんは相変わらず可愛いし、肌だってとても綺麗だ」
「あ、ありがとう」
佐助君の『綺麗だ』という言葉に照れて俯いたけど、問題はそのあとだった。
佐助「その…本当に疲れてないの?謙信様の相手をその…」
佐助君が気まずそうに目を逸らし、言葉を濁した。