第66章 気づかいの理由は
(ん?謙信様の相手…疲れる………もしかして)
ある結論に達し、急に恥ずかしさがこみあげてきた。
「えっ?えっっと、その…………」
両手で口を隠したけど、まだ恥ずかしい。
「ご、ごめん、佐助君っ!また後で!!!」
佐助「あ、舞さんっ!!」
(第三者目線)
舞が走り去った後、蘭丸が音もなく近寄った。
蘭丸「あーあ、佐助殿ったらばらしちゃったの?」
佐助「舞さんが不審に思っていたし、変に思い違いをしていたから…」
蘭丸「うん、確かに。あれ以上綺麗になる努力されちゃったら、あてられる俺達が困っちゃうよね。
でも舞様って凄いよね。毎晩謙信殿に求められても次の朝にはきっちり起きてるんだもん」
声や物音がしているわけではない。
謙信と舞なりにそこはわきまえて何かしら対策をとっているのだろうが、かすかに伝わる床の震動、部屋が近い者は空気に混ざる甘さを敏感に感じ取っていた。
常人なら気づかない気配にも、ここに居る人間は誰一人常人などおらず、誰もが感じ取っていた。
佐助「もしかしたら、ああ見えてすごく体力があるのかもしれない。
でも皆の気遣いの理由を知ってしまった舞さんがどうするか……」
蘭丸「あー……謙信殿はしばらくお預けをくらうかもしれないね☆」
佐助「機嫌が悪くならなきゃいいけど…」
――――
蘭丸と佐助の予想は見事にあたった。
舞に拒否された謙信は日に日に鍛錬をエスカレートさせて、佐助だけでは追いつかず、蘭丸、信玄にまで被害が及ぶことになった。
鈍い妻は『謙信様、鍛錬頑張り過ぎですよ、ふふ』と笑い、信長と光秀は舞に知られぬよう影でひっそりと笑っていた。