第66章 気づかいの理由は
佐助「舞さん、今日の分の薪を置いておいた。あと水甕の水は取り換えてある」
「ありがとう、佐助君」
蘭丸「舞様、竈の火を起こしておいたよ。
ご飯はもう炊けてるし、お味噌汁と白菜のお浸し作っておいたから」
「わあ、ありがとう、蘭丸君!美味しそう!」
ここまではいつもと変わらないやりとりだった。
忍び二人は細々(こまごま)と私の手伝いをしてくれる。
信玄「姫、君の洗濯物以外は俺と信長とで洗濯しておいたよ」
「えっ!?ごめんなさい、そんなことをさせてしまって」
信玄「気にしなくていいよ。自分の物の手入れくらいはしなきゃな」
「は、はぁ…」
(洗濯?信玄様と信長様が……!?)
信じられない思いで信玄様を見送っていると、そっと白い影が傍に立った。
光秀「舞、龍輝と結鈴と三人で拭き掃除をしておいた。
あと囲炉裏と火鉢も綺麗にしておいた」
「み、光秀さんまで、どうしたんですか」
光秀「…外に出られず暇なものでな」
相変わらず、怜悧な顔から含まれた何かを読み取るのは難しい。
「ありがとうございます…?」
首をかしげながら朝食のメインディッシュを仕上げていく。
「ご飯ができましたよ、あれ?謙信様と佐助君は?」
見回すと二人が居ない。そう言えば謙信様とは朝挨拶をして以来、顔を合わせていない。
信長「ああ、あの二人は朝から外で鍛錬しているぞ」
「え?ずっとですか?」
(長すぎない?)
足がとられやすい雪の中でも通常と変わらず戦えるようにと、寒稽古を欠かさずやっていたけれど、それにしても朝からずっとというのはやりすぎのような気がした。
信長「あの軍神は少しやりすぎなくらい鍛錬した方がよい」
それを聞いて隣に座っていた光秀さんが涼しげに笑った。
「はぁ…そうですかね???」
集まってきた面々がそれぞれのお膳の前に座った。