第65章 大雪の夜に(R-18)
謙信「初めての目合(まぐわ)いで舞を孕ませ、お互い辛い道を進んでしまった。
二度とそうならぬよう500年後で、女の身体や性交について、妊娠の知識を得てきたのだ」
「そうなんですか…」
知らなかった。
(あ、でも『帝王切開が』って慌てていた時があったから、あの頃にはもう調べていたりしたのかな)
謙信様の片手がそっと下腹を撫でた。
謙信「お前の粘液の状態からも今が『その時期』だとわかる」
(え!?)
咄嗟に手で身体を隠した。
全然意味のない行動だったけど恥ずかしすぎて…。
「は、恥ずかしいです。謙信様!」
気付かないうちに身体の状態を暴かれていたなんて。
脇に追いやられていた掛布団を引っ張って頭まで引き上げた。
謙信様が優しい手つきで布団を口元までおろしてきた。
色違いの目がユラユラと静かに揺れている。何かを抑え込むように…。
謙信「タイムスリップの前に言ったことは有効か?
状況は変わってしまったが、俺の気持ちは変わっていない。だが舞がまだ欲しくないというなら、避妊具は500年後で用意してきた。
さっきはこらえきれず直接入れてしまったが……一秒でも早くお前を抱きたかったのだ、悪かった…」
謙信様の眉が申し訳なさそうに下がっている。
『何にもはばかることなく愛し合い、交わした想いの先に子供に恵まれたら幸せだろう』
そう言ってくれた謙信様。
同じ気持ちだったからあの時は迷いなく返事をした。
越後に戻れたらという話だったけど、歴史を変えないために戻らないと決めた。
ユラユラと揺れている瞳の理由がわかった。
(謙信様は思う存分愛し合いたいと思いながら、私が嫌と言えば待つつもりなんだ)
せめぎ合っている心を想って、愛しくなる。
愛を交わし、子供ができたら…と望んでいる謙信様が、私の身体の状態を知りながら、ナカで達しなかったのは思いやりだった。
まだ髪を弄んでいる謙信様は心なしか拗ねたような顔をしている。
きっと私の返事に検討がついているんだろう。
猫がじゃれているような、そんな様子が可愛らしかった。