第65章 大雪の夜に(R-18)
もちろん私も、と答えたいけど…
「生活も安定していませんし、もう少し待ちましょう」
謙信「それが妥当な考えだろうな。わかっているが……」
はあ、と謙信様は大きくため息を吐いた。
ギュウと抱きしめられ、硬い胸に頬が当たった。
謙信「お前をもっと愛したい」
やるせなさが腕の強さからも伝わってくる。
越後に無事についたらすぐにでもと言っていたし、私も同じ気持ちだったから、切ない気持ちがよくわかる。
無事に越後に行けていたらきっとすぐに祝言を挙げ、今頃は甘い甘い夜を何度も重ねていたことだろう。
見たかったお城も、そこで待ってくれていたはずの人達も、可愛いうさぎも達も、私達の甘い生活も…すべて幻になってしまった。
でも、ひとつだけここでも叶えられるものがある。
(謙信様が傍に居る)
思い描いた甘い生活とはかけ離れているけど、一緒に居られるだけで心が甘く満たされる。
もう離ればなれになるなんて考えたくない。
すっと一緒に、寄り添って生きていきたい。
「ふふ、嬉しいです。私ももっと愛し、愛されたいです。
その…いろいろ勉強して気遣って下さってありがとうございます。大好きです、謙信様」
胸板に頬を摺り寄せていると心がジワリと温かい。
謙信「舞を傷つけぬためだ。当たり前のことだろう?」
「ん……」
顔を寄せられ上を向くと口づけられた。
白濁の熱を貰えなかった切なさを、唾液を舐めとって誤魔化した。
深く口づけながら、謙信様が掛け布団をどけ、覆いかぶさってきた。
謙信「子ができぬよう気をつける。
もう一度舞を愛したい。いいか?」
一度では発散しきれなかった硬い欲が押し付けられた。
「っ」
謙信様の手には口を縛っていた帯紐。
目を丸くしている私をいたぶるように、目を細め、口の端を吊り上げている。
妖艶な姿にドキドキした。
(縛られそうになってドキドキするなんて…)
謙信「目を瞑って待つとは従順な女だ。すぐに良くしやる」
「ん…」
変な趣味に目覚めたのではと不安に思いながら、私は黙って帯紐を受け入れた。