第64章 大雪の夜に
「はぁ、こうしてゆっくりできたのは久しぶりですね」
朝から大雪になったので市場には出かけられず、一日小物作りと家事をして過ごした。
男性陣も冬支度を完全に終えたわけではなかったけど、家の中でゆったりとしていた。
謙信「長旅の後、休む間もなく毎日働き通しだったからな。こういう日も良い」
夜着に着替え終わると、すでに布団に入っていた謙信様が掛布団を捲って手招きしてきた。
龍輝と結鈴を見ると深く眠っている。
(ちょっとだけ…)
そろそろと入ると、謙信様の体温で温まった布団が心地良く迎えてくれた。
「ふふ、あったかいです。こうして一緒に布団に入るのは久しぶりですね」
謙信様の胸におでこを当てて、スリスリする。
ここに着くまでは常に集団行動で、一緒の布団で寝たのはタイムスリップ前夜だ。
謙信「舞は早くに寝てしまうからな」
クスっと笑われ、思い当たり過ぎて申し訳なくなる。
毎日慣れないことの連続で、結鈴と龍輝を寝かしつけて、そのまま寝てしまう日々だった。
「すみません。謙信様とゆっくり過ごしたいなっていう気持ちはずっとあるんですけど…」
謙信「良い。女はお前しか居ないからな、負担がかかっているのは分かっている」
労うように何度も髪を梳いてくれる。
(気持ちいいなぁ)
目を瞑ってウットリしていると、
謙信「ふっ、うさぎだな。いや、猫か?」
髪から指が離れ、喉をくすぐられて飛び上がる。
「ひゃっ、くすぐったいです!」
硬い胸を押して離れようとすると、筋肉質な腕がぐるりと背に回って動けなくなった。
謙信「今夜は離さない」
(離さない?!)
甘い予感に気付かないふりをした。