第63章 上司のために佐助大活躍!
(佐助目線)
佐助「まずい!謙信様のあの顔はクリスマスを忘れていたって顔だ!」
佐助は誰にも気づかれぬようあの場を去り、急いで外に出た。
誰も歩いていないまっさらな雪を遠慮なく蹴散らし、常緑樹に駆け寄るとスルスルと登り、手ごろな葉を採る。
佐助「同じ葉ばかりじゃ、味気ないな。あっちの木の葉も…。あ、あの赤い実は良いな」
見つけ次第迷いなく収穫して、里山に戻った。
自室に駆けこんで、材料を床に散らす。
佐助「時間がない」
きっとあの後信玄様と口論し、そのあと舞さんがなだめ、寝室に仲直りの触れ合いをしに来るはずだ。
全行程、予測時間は10分。あと数分だ。
冬ごもり中に座布団を作ろうと、ツルを乾燥させておいて良かった。
ツルを円形にしてまとめ、急ぎ収穫してきた葉を飾り付け、松ぼっくりの代わりにマキビシを付けた。
佐助「雪に覆われて松ぼっくりは見つけられなかったし、マキビシで代用だ。
よし、いい感じになった!でもリボンが欲しいな。それにツリーも…」
一味足りないリースを眺めながら、ツリーの構想も練っていく。
一度舞さんの仕事部屋に行き、悪いと思いながら布の切れ端をいくつか失敬して、謙信様達の部屋に駆け込んだ。
佐助「これは謙信様カラーだな」
水色の切れ端をリースにキュッと結び付け壁に掛けた。
佐助「忍法、百花繚乱!なんてな…」
目くらまし用のかんしゃく玉に使う、佐助特製布テープをリースから壁に伸びるように飾っていく。
佐助「よし、仕上げはこれだ」
ゴト、と部屋の隅に置いた信玄様の盆栽に、装飾を施していく。
懐から出した綿をちぎっていると、聞き慣れた上司の足音がしてきた。
佐助「っ、もう、きたのか!」
高速で棉を枝につけると、最後の仕上げに、リースのリボンにアロマオイルを1滴垂らした。
フレッシュな葉の香りに、アロマオイルの香りがよく合っていた。