第63章 上司のために佐助大活躍!
夜になると結鈴と龍輝が一緒に居るので、二人きりとはいかない。
日中も忙しく働いているので二人きりになるのは難しかった。
『二人で居る』という時間がいかに貴重か、お互い嫌という程わかっていた。
舞の腰に回していた謙信の腕に力がこもった。
謙信「ああ、お前の望みは、俺の望みだ。喜んで叶えてやろう」
謙信は舞の身体を横抱きにすると、早々に自室に向かった。
ガラ
謙信「……!?」
「わあ!!謙信様、サプライズだったんですね!!!!
凄い!綺麗!ありがとうございます、謙信様っ!」
抱かれた状態で舞が部屋を見回し、歓声をあげた。
謙信達が寝ている部屋はクリスマス一色になっていた。
常緑樹で作られた大きなクリスマスリースには、水色の布で大きなリボンが結ばれていた。
リースを中心に、紙テープのようなもので部屋の四方を彩りよく飾ってある。
「ふふ、小さいクリスマスツリーも作ってくれたんですね。可愛い…。
あれ?これって信玄様が『大切に育てようと思うんだ』って言っていた、盆栽じゃ…」
謙信が見てみると、確かに信玄が市で見つけて買ってきた盆栽だった。
それに布の切れ端をリボン状に結び、雪に見立てた白い綿が絡められている。
謙信「……ふ、佐助のやつ」
おそらく謙信がクリスマスを失念していたことに気が付き、急ぎ用意して、主人の鬱憤を晴らすために信玄の盆栽を持ち込んだのだろう。
小さく呟いた声に舞は気づかず、この部屋を用意したのは謙信だと思いこんでいる。
「やろうと思えばクリスマスっぽくできるものですね。
あ、この水色のリボン、謙信様の香りがします!
私がプレゼントしたアロマオイルをふくませてくれたんですね!うれしいです。
今年は忙しくて忘れていたけど、来年はクリスマスパーティーを開きたいな…。ね?謙信様っ?」
心から喜んでいる舞に、真実を言うのはためらわれた。
謙信「そうだな。来年はもっと盛大にこの部屋を飾ってやる。
お前の喜ぶ顔を想いながら……」
身をかがめ、舞に触れ合うだけの口づけを贈った。
愛しい者の唇に触れながら、謙信は表情のない部下に心から感謝した。