第63章 上司のために佐助大活躍!
「謙信様、せっかく作ってくださったのだから使いたいと思うのですが、駄目でしょうか?
私の他に鏡台と裁縫箱を使う方もいないでしょう?
薪に使うはずだった大事な木を、私のために使って下さったのに無下にするというのは、木にも、信玄様にも申し訳ないと思うんです」
信玄は別として、自然に対しても申し訳ないという姿に謙信の怒りが少しだけ静まった。
だがこのままではおさまらない。
謙信「だが、俺は…!」
「?」
『舞にプレゼントを用意していない』
そう言おうとした謙信は、不甲斐なさに言葉が途切れた。
日夜健気に働いている妻に対してあまりではないか、と謙信は気を落とした。
「謙信様には一足早いクリスマスプレゼントを頂きました。
とても使いやすいですよ?木の良い香りで癒されますし、謙信様が作って下さったと思うと、一日座っていても疲れ知らずです」
謙信が言いたい事を察して舞は微笑んだ。
それでも謙信が納得していない顔をしていると、少し俯き、頬を赤く染めた。
謙信「……?」
「謙信様、ひとつお願いがあるのですが良いですか?」
さっきまで居た佐助は、いつの間にか姿を消していた。
舞が恥ずかしそうに身を寄せて囁いた。
謙信「お前の望みなら何でも叶えてやると言っているだろう?」
近づいてきた小さな身体をひき寄せ、囁く声には甘さが滲んだ。
「クリスマスプレゼントとして、私と二人きりで過ごしてもらえませんか?少しだけで良いので…」
信玄は『あとで』鏡台を運ぶと言っていた。
舞はそれまでの少しの時間を謙信と過ごしたいと申し出た。