第63章 上司のために佐助大活躍!
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一ケ月後。
信玄「姫、メリークリスマス。君のために鏡台と、裁縫箱を作ってみたんだ。
受け取ってくれるかい?」
「えぇっ!?わぁ…素敵な鏡台。裁縫箱も使いやすそう。
もしかして現代で私が使っていたモノににせて作ってくれたんですか?」
信玄「ああ。市では気に入った裁縫箱が見つからなかったと言っていただろう?
だったら作ってあげようと思ってな。
それに舞は可愛い。鏡台に向かって化粧をし、髪を結い綺麗になってもらいたかったんだ」
「あ、ありがとうございます。信玄様…」
耳に飛び込んできた会話に謙信が勢いよく振り返ると、舞は『可愛い』と言われて頬を赤く染めていた。
佐助「そうか、今日はクリスマスか。
流石信玄様だ。サプライズの上に、さりげなく『可愛い』と口説いている…」
近くにいた佐助がぽつりと言い、その後、探るように謙信の方を見た。
佐助「謙信様、その…クリスマスプレゼントの用意は…?」
謙信「………」
謙信がユラリと立ち上がった。
舞は気づかずに嬉しそうに裁縫箱を開け閉めしている。
謙信は静かに舞に歩み寄り、背後から声をかけた。
謙信「舞、よもやそれを受け取るわけではなかろうな?」
怒気を含んだ声かけに、わかりやすく舞の肩が震えた。
「け、謙信様……」
おそるおそるといった体(てい)で舞が振り返った。
謙信「信玄……お前という男は…!」
信玄「ふっ、ちゃんと『来月』とヒントをやったじゃないか。
気付かないで流した謙信が悪い。
姫、謙信のことは気にせず使ってくれ。鏡台は『あとで』君の部屋に運んでおくからな」
爽やかな笑みを残し、信玄は意味ありげに言って去っていった。
舞は大切そうに裁縫箱を抱きしめている。